至仏山は登るのに4時間かかって帰りのバスに間に合うか心配したが、1時間半ほどで下山できたので予定時間にほとんど遅れることはなかった。
鳩待峠・尾瀬戸倉間は定時バスが運行されていると書いてあるが、実際には乗合タクシーである。だから、12時半を過ぎると1時半までない訳ではなく、1時過ぎには人数が集まって出発した。
3時間かけて登って来た道をどんどん下る。戸倉に着くと、バスの出発時刻までまだ1時間以上ある。バス停隣にある尾瀬ぷらり館で汗を流していこう。ここは尾瀬の地主である東京電力がやっているビジターセンターで、尾瀬の歴史や風物を展示するネイチャーセンターが併設されている。
同じことを考える人はいっぱいいて、館内は盛況だった。ただ、みなさんお風呂から上がった頃合いで、洗い場も浴槽も問題なく使えた。お風呂は戸倉温泉の硫黄泉が引いてあり、無色透明だが硫黄臭がある。温度はいくぶんぬるめ。
尾瀬戸倉バスセンターのすぐ隣にある尾瀬ぷらり館。温泉マークが示すとおり、尾瀬戸倉温泉が引かれている。
泉質としては、奥鬼怒温泉郷や日光湯元温泉と同じ硫黄泉だが、色も無色で匂いがそれほどでもないのは、こちらの特性なのかそれとも加水しているのだろうか。まあ、この後みんなバスか自家用車なので、匂うより匂わない方がいいかもしれない。
備え付けボディソープで洗い、浴槽に入ってゆっくりする。内風呂から脱衣所にある大きな時計が見えたので、時間を確認しながら入ることができた。湯上りには自販機でノンアルコールビールを飲みながらリュックの中を整理した。
尾瀬戸倉に来るのはこれで2度目だが、関越交通のターミナルが無人化するなど、かなり寂れてきた印象である。温泉宿はいくつかあるがいずれも小規模で、温泉街に付き物の飲食店も土産物屋もない。人通りがほとんどないのは、川治や塩原もそうである。
尾瀬に若い人達が大挙して押し寄せたのは60~70年前で、その時の連中は多くが現世から退去している。あまりにもゴミを捨てるので、持ち帰り運動が始まって今日まで続いている。戸倉にもゴミを捨てられないので、バスに持ち込んでSAに捨てることになる。
戸倉温泉も、当時は尾瀬歩きのベースキャンプとして、かなり賑わったと想像される。その後スキーブームが来て冬シーズン限定で栄えたが、スキーブームも終わっていまは静かな温泉宿である。
いま賑わっているのは駐車場と乗合タクシーである。交通事情が改善されて尾瀬の多くは日帰り圏となり、いま主流なのは朝早く戸倉に車を止めて乗合タクシーで鳩待峠へ向かい、尾瀬ヶ原を周回して夕方に戻るパターンと思われる。山小屋にも温泉にも、あえて泊まる必要はない。
寂しいような気もしないでもないが、それで静かな環境が保たれるとすれば悪いことばかりでもない。大規模ホテルも飲食店も土産物店も、ゆっくり休養するのに必要ではないのだ。
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