先週のことである。固定電話はずっと留守電にしているが、いつの間にか着信があり用件ランプが点滅している。さっそく再生してみた。
「こちらはNTT、日本電信電話株式会社です。この電話は2時間後に使えなくなります。オペレーターと話したい方は1を…」
どうも嘘くさい。2時間後というけれども、そもそも再生した時点で2時間以上経過している。NTT東日本と言わないのも変だし、フレッツと繋いでいるので支払いはちゃんと毎月確認している。発信元を確認するとインドからの国際電話だった。
ネットで検索してみると、まさにこの内容の詐欺電話が多数かかってきていて、国民生活センターのホームページでも注意喚起していた。「総務省やNTT東日本、NTT西日本が、電話を止めることに関して自動音声ガイダンスやSMSを使って連絡することは絶対にありません」
こうした詐欺電話については、NTTはもちろん、国民生活センターのサイトでも注意喚起されている。年寄りだから狙われたのだろうか。

こんな電話があったよと奥さんに話したところ、ちょうどその朝、お隣の奥さんとそんな話をしたそうである。「保安協会から、お宅のアンペア数を確認したいのでお伺いしたいと言ってきたんだって。本当かしらと訊くから、そんなの嘘に決まってるでしょ。二十何年住んでて一回だってそんなの来たことある?って言ったの」
さすが家の奥さん、簡単に騙されないのはたいしたものである。それはそうと、近所でもこんな頻繁にあるというのは、全国至るところにこういう電話がかかっているということである。ひどい世の中である。
この件は、とりあえず個人情報を聞き出すということだが、そういう電話に引っかかるリストが当然作られて、詐欺グループの標的にされるのは確実である。住所が分かれば、悪質訪問販売や強盗・空き巣の危険もある。そんな電話に出るのはネギを背負った鴨であろう。
それともうひとつ思ったのは、こうした詐欺電話の企画立案は誰がしているんだろうということである。
タイやフィリピンから指図して窃盗や強盗・詐欺をする「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」の連中は、いかにもそれらしき風体をしているものの、それほどの知恵者には見えない。実行役を脅すのは得意そうだが、どういう電話をかければ応対する可能性が高いとか考えるようには見えない。
われわれが就職した半世紀前には、派遣法も男女雇用平等法もなかったから、多くの新卒は大なり小なり会社に入って正社員として働いた。ブラックな職場も給料の少ない会社もあったけれど、きちんと働けばそれなりに生活が成り立つところが多かったと思う。
けれども最近では、子供の数が半分しかいないのに、多くの若者は安定した職場で働くことができない。景気がよくないこともあるし、男女平等で求職者が倍になったのもあるけれど、会社というのは多くの人に働く場所を提供するところだと経営者が思わなくなったのが原因ではないかと思う。
みんながビル・ゲイツにはなれないし、イーロン・マスクにもなれない。なのにわが国ではある程度成功すると、もっと儲けようもっと大きく商売しようと考える。昔は義理でも社会貢献とか言ったものだが、自分の個人資産を積み上げて世界ベスト何位に入るのが成功した経営者と思っている。
そんなのは宝くじ当選者を全部集めて全財産賭けさせたと同じことで、誰か勝つかもしれないが大部分は全財産失う。それ以前に、ほとんどの人は最初の宝くじにすら当たらない。
だから、能力ある連中の中には、背に腹は代えられない。法に触れるかもしれないがカネになるならやるしかないと、「トクリュウ」に知恵を貸す者がいるのではないかという気がする。そういう人達も褒められないが、もっと悪いのは自分達の儲けだけ考えている日本の経営者である。
もともと日本人は、法律や制度よりも仲間内の取り決めが優先されるムラ社会で生きてきた。他人を傷つけたりモノを盗んだりしないから、知恵を貸して対価を得るのはコンサルタントと同じと思っているかもしれない。だとすると、十年一日の体育会社会である警察とは、レベルが違う。捕まる訳がない。
われわれにできるのは、自分や身の回りがそういう連中に狙われないように気を付けることぐらいかもしれない。
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