Go Down Gamblin' ver.6

私taipaが趣味の世界からお送りします

滑りやすい急登がひたすら続く ~至仏山再挑戦(中編の2)

至仏山登山口は至仏山荘の正面、研究見本園の入口である。100m先に先発したグループの姿が見える。その背後は白く霞み、そこにあるはずの至仏山はまったく見えない。

しかし、紅葉した下草が広がる尾瀬ヶ原は、広々として気持ちよかった。結局のところ、これがこの日に見たもっとも雄大な景色だったかもしれない。シカ除けのガードを2ヶ所開け閉めして、いよいよ至仏山に向けての登り坂が始まった。

 

尾瀬山ノ鼻の植物研究見本園。背後にある至仏山は霧の中でまったく見えない。開けた景色はこれがほとんど最後だった。

 

登山道に入ると、丸太の木枠で作った階段で、踏む場所は岩である。ごつごつして歩きにくいが、何とか登って行く。ところがしばらくすると木枠も丸太もなくなり、下は岩だけの斜面である。これが噂の蛇紋岩で、たいへん滑りやすい。

蛇紋岩は文字通り岩肌に蛇みたいな模様があるが、やっかいなのは雨に打たれたり踏まれたりすると、削れて色が変わりつるつるになることである。ひとつひとつの岩は足のサイズより小さいので、踏み込むとずるっと滑るの連続である。

これが坂道ならまだましだが、大きな段差がある場所が少なくない。普通は3点確保すれば大丈夫なのだが、3点のうち一点が滑れば2点確保で転倒してしまう。

山慣れている人はダブルストックですいすい進むが、なにせ67歳の年寄りで足がおぼつかない。段差があるたびにいちいち手を付いて登るので、神経を使ってくたくたになる。

そして、登山道の両側にロープが張られていて、その外側は「植生保護のため立入禁止」である。段差があろうが滑ろうが狭いロープの内側を歩くしかない。しばらく歩くうちに、これは面白くない道だと思った。

両側が薮である上、少しでも広い場所はすべて立入禁止である。朝露と雨で濡れていたので座ろうとも思わなかったが、疲れても休む場所がない。

1時間ほど歩いて、ようやく休憩できそうなベンチを見つけた。ベンチともいえないようなボロボロで、しかもじっとり濡れていたけれど、ここまで小休止できる場所はなかったからこの先もないかもしれない。幸い、立入禁止ロープはベンチの外側である。腰を下ろし、エネルギーゼリーで補給する。

 

足場の悪い急登を1時間ほど登り、始めての休憩ベンチ。しかし、これ以降頂上近くまでベンチはなく、狭い登山道の外はすべて植生保護で立入禁止である。

 

登り自体疲れるけれど、この道は滑りやすいので余計に疲れる。加えて、霧で上も下もほとんど見通しが利かない。麓では至仏山が見えなかったが、中腹では頂上も麓も見えない。

この先も、同じような状況が続く。辛抱して登っていくだけである。ベンチ休憩の少し後で、何組かのグループに抜かれた。おそらく、始発で鳩町峠に着いた人達で、私より1時間程度遅れて入山したものと思われる。

木の階段があり、再び蛇紋岩の急傾斜があり、鎖場も出てきた。期間限定かつ登り専用の登山道ではあるが、案内表示はほぼ皆無である。そして、ベンチ休憩から1時間ほどすると、消えかけた案内看板がある。かすれた文字を読むと、「ここは中間点です」と書いてある。

2時間歩いて中間点ということは、頂上まで4時間かかるということである。コースタイムは2時間15分だが、誰がそんなタイムで登れるのだろう。少なくとも、鳩待峠から山ノ鼻まで1時間かかるのと同じ人ではあるまい。

正直なところ、登り専用とはいっても、一般登山道で鎖場で鎖を使って登る人にはお勧めできない道である。そして、歩きにくくて嫌だと言っても、この道を戻ることはできない。緊急事態でもなければ、登り始めたら頂上まで登るしかないのである。

 

(この項続く)

 

p.s.中高年の山歩きシリーズ、バックナンバーはこちら

 

 

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蛇紋岩の滑りやすい急登がひたすら続く。案内も説明版もほとんどない。2時間歩いて「ここが中間点です」の消えかけた案内板を見た時には気が遠くなった。