11月24日日曜日。朝から天気で風もない。この日はつくばマラソンで、みなさんがんばっていらっしゃる。せめて同じ時刻に、新川沿いのサイクリングコースを走ってみよう。2週間後に迫った八千代ロードレースの試走である。
風はないのだが、日差しが眩しい。気温は高くないけれども、走っていると体感温度は高く感じそうだ。私も、夏ほどではないが汗をかいた。しかし、2日前にkm7分ペースを維持できなかったような調子の悪さはない。規制がないので15kmまでだが、最後までkm6分40秒でクリアした。
この調子であれば、14.3km1時間50分の関門は大丈夫そうだ。日頃アップダウンのあるコースを走っているものだから、八千代の平坦コースはとても走りやすい。あとは、2日前のような絶不調で当日を迎えることのないよう、調整するだけである。
数年前から糖質制限を実践中で、ブログにもその経過を逐次記録している。だから糖質制限に関する本は好意的にみてきたのだけれど、これは例外である。こういう本・こういう著者が前面に出てくると、糖質制限の信頼性そのものが損なわれるように思う。
著者の肩書は、北里研究所病院糖尿病センター長である。新千円札に採用された明治時代の名医・研究者の創設した病院である。にもかかわらずこうした内容を書くというのは、想像力がないか自分で書いていないかのどちらかだろう。
本全体に「ロカボ」という新語(登録商標?)の宣伝臭がぷんぷんするのは置くとして、この人は本当に医師免許を持っているのかと思うくらい医学的な常識がなく、そのことを自慢げに主張するあたりは正常な神経とも思えない。
糖質制限が糖尿病の治療に有力であることは自分の経験から分かるけれども、この本・著者はどうかと思う。
例えばこのセンセイ、糖質制限に出会うまではカロリー制限一本だったそうである。それは日本中の大半の医者がそうだったし、カロリー制限がダイエットや糖尿病の治療に役立つことは確かなので、そこまではいい。(カロリー制限の問題は、長続きしないことと、糖質制限に比べて効果が薄いことである)
その文脈で、血液検査で中性脂肪の多い患者には脂肪制限も奨めていたと書いてある(この著者の本を何冊か読んだので、「ロカボで」の本ではないかもしれない)。脂肪制限もまあ許すとして、「先生、私、脂肪なんてほとんど摂ってないです」という患者に、「だったら中性脂肪増える訳ないでしょう」と言ったという。
こんなことを北里病院の糖尿病センターで言ったとすれば、本当に医師ですかということである。私が消化について勉強したのは60年も前だが、その時から脂肪は消化されると脂肪酸とグリセリンになると書いてあった。脂肪酸が中性脂肪にならない訳ではないが、それには遠い道のりがある。
中性脂肪は生物の体内に蓄えられた脂肪で、元になるのは炭水化物であり糖質である。食べた脂肪がそのまま中性脂肪になるなら、草食動物はどうやって脂肪ができるのか。それを言っているのが素人なら仕方ないが、有名病院の医師がそれで患者を診ているというから驚きである。
そのことは、糖質制限が知られるようになって新たに判明したことではない。それこそ何十年前から、医学・薬学・栄養学とか以前に、小学校の理科で勉強することなのである。それを知らないし、知らないことを恥ずかしげもなく本に書いてしまうのは本当に恐ろしい。
もうひとつあきれるのは、カロリーなど気にせず腹いっぱいになるまで食べろというのである。確かにカロリー信仰にはあまり意味がないが、かといって腹いっぱい食べて健康にいいはずがない。
これには注釈があって、満腹中枢に異常がある人は腹いっぱいになっても満腹感がないので、そんなになるまで食べないでくれという。だったら、日本人の大多数は満腹中枢が異常である。腹いっぱいと満腹感にタイムラグがあるのは当り前で、普通の医師(人)は腹いっぱい食べろなんて言わない。
だから普通は、満腹感が感じられるようゆっくり食べましょうと指導する。腹八分目とゆっくり食べることは、ずっと昔から健康管理の基本である。糖質以外なら腹いっぱい食べていいなどというのは、ただの受け狙いであろう。
他にも、たんぱく質も塩も糖質でないから、いくら食べてもいいなどという書き方をするけれども、どういうものであっても食べ過ぎは体に毒である。人工甘味料はただの水よりダイエット効果があるという説に至っては、トンデモ論としか言いようがない。これが糖質制限なら、なるほど糖質制限は長年無視されてきただけのことはある。
製薬会社や多くの開業医に不利になるからといって、理論上の裏付けも効果も実証されている糖質制限を無視し続けることと、糖質制限が儲かりそうだといって、ロカボだ何だと商売を始めることは、同じことの違う側面である。繰り返しになるが、この本はトンデモ本である。
p.s. 書評過去記事のまとめページはこちら。1970年代少女マンガの記事もあります。
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