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将棋界終わりの始まり? 福間女流の配慮要望

TVを見るのは朝の30~40分に限られる。その時間にトップニュースの一つとして採り上げるのだから、NHKは社会的影響の大きい事柄と考えているのだろう。非常に違和感があったので、長くなるけれどあえて記事にする。

 

最初に思ったのは、女流棋士がタイトル戦に出るのに妊娠・出産への配慮をしてほしいといっても、現実問題それが影響するのは3人だけ。多く見積もっても5~6人に限られることである。社会的影響が大きいとはとても言えない。数十人の女流棋士の大部分だって「不戦敗で何がいけないの?」が本音だと思われる。

そもそも、将棋に限らずどんな大会であっても、開催日は本人の都合とは関係なく決まっていて、都合が悪かったり体調がすぐれなければDNSが当り前である。アマの将棋大会で「妊娠しましたんで開催日を変えてください」と言い出したら、「慎重に配慮します」と主催者は言うのだろうか。

 

そして、福間女流は単なる大会参加者ではなく、タイトル保持者である。将棋界は棋士の組織なので、タイトル保持者は一般企業の取締役、CEOに当たる。従業員であれば妊娠・出産に配慮せよと言えるが、管理者がそれを言えるかということである。

女流棋戦であっても、最高賞金は千万単位。福間女流の年収も外資系ビジネスマンや一般企業の役員クラスである。彼女はその賞金が自分の技量に見合うと考えているのだろうが、将棋の技量だけで言えば奨励会レベルであり、男性棋士のトップレベルとは格段の差がある。奨励会員は無給である。

なのにどうして高額賞金が可能かというと、基本的にはスポンサーがついているからである。金額的には新聞社がもっとも多く、新聞の将棋欄に棋譜を売ることで高額賞金や棋士・職員の給料が出ている。

だから、決められた日時にきちんと対局することは、契約料、ひいては賞金や給料の前提である。福間女流が連盟の事務員であれば妊娠・出産に配慮せよと言えるが、管理者がそれを言えるのか。誰に対して、配慮せよと言うのか。手合い係か?彼らこそ従業員である。

福間女流も、こんな会見で将棋人気が高まるとは思っていないだろうから、おそらく女性棋士の地位向上・待遇改善を意図しているのだろう。現在将棋連盟の会長は女性(女流棋士)なので、あるいは相談の上かもしれない。

しかし、彼女が考慮しろとやり玉にあげている運営側は、究極的にはスポンサーの意向である。一般企業でいえば、CEOが株主に休ませろと言っているようなものだ。もちろん休む権利はあるけれど、「申し訳ないが休ませてください」と頭を下げるもので、弁護士同席で権利を主張するものではない。

彼女の立場であれば、妊娠・出産により1年でも2年でも休場で別に不都合はない。女流棋士は、ちゃんと産休・育休が認められている。タイトルを持っていても不参加でその期を決定戦にすれば問題ないし、休場明けでまた予選から参加すればいいだけである。対局日が決まっていれば、不戦敗はやむを得ない。

私は強いから特別扱いしろ。タイトル戦は産休明けにまとめてやるからそれまで待ってろって、性別が女性の中で強いだけでそこまで言えるのか。私がスポンサーなら、じゃあ女流棋戦は別に要りませんと言う。最先端の将棋を見たければ、コンピュータ将棋選手権を掲載すればいい。

こう言うとポリコレに反するが、彼女の棋譜をどうしても見たいファンがどれだけいるのだろうか。女性という性別で誰が一番強いかに興味があるかもしれないが、そんなことは毎年トーナメントをやれば済む。タイトル保持者を決めるのは、営業上の理由である。

現在、A級棋士の渡辺九段(永世竜王)が休場している。これは健康上の理由、足のケガで正座できないからである。渡辺ほどの実力者であれば、最初と最後だけ盤の前にいて、あとは食堂か応接の椅子に座って(盤を見ずに)対局しても半分以上勝つ。それをしないのは、スポンサー(主催者)と対局相手に失礼と考えているからではないだろうか。

 

こういうニュースを耳にして思うのは、お隣の囲碁、日本棋院が深刻な経営危機にあることである。囲碁が厳しく将棋に余裕があるのは、藤井人気もさることながら、プロ入りの基準や退会規程が厳しいため、プロの人数が制限されているからである。新聞社はじめ、スポンサーの不景気という収益構造の問題は同じである。

男女機会均等という意味では、最初から将棋のプロ入り基準は男女差がなく、福間(里見)も西山も中も、三段リーグを勝ち抜けばプロ入りできた。できなかったのは負けたからである。女流棋士を育成するのは将棋連盟の普及策のひとつであり、女流を優遇する目的ではない。

十代半ばから性別が女性という中で一番強いので、外資系ビジネスマン並みの収入を得ていれば、世間常識のないまま中年になるのも仕方がないとも思う。しかし、一般企業で能力のない社長によって経営が傾くのと同様、経営の一翼を担う存在がこういう主張を堂々とすること自体、終わりの始まりに思える。

日本棋院はビルを建てて半世紀で左前になったが、将棋連盟も東西の会館を建て替える現在がピークで、近い将来厳しくなるのかもしれない。私の寿命とどっちが先か分からないが。

 

p.s. 将棋記事のバックナンバーはこちら

福間女流六冠の妊娠・出産配慮要望。本人としては運営側に問題提起したつもりだろうが、彼女はむしろ運営側である。NHKがトップニュースにするような社会的影響があるのだろうか。